2005年07月のアーカイブ

Heavenly 「Le Jardin de Heavenly」

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 天国が間近にあった場合、幻想がそこに付随することはないだろう。へヴンリーの天国は距離感がどうのという前に、現実そのものを至福に導く。そのため、リアル~ファンタジー間の垣根は崩壊し、発生するのはオシャレでポップな音というわけだ。
 今でもここにあるメロディは夢を生成している。聴き手が絶えない限り、へヴンリーの位置というものは不動であるし、その効力も変質、失効などはしない。時間の経過によって損なわれるような紛い物のポップミュージックなど、へヴンリーと同じ土俵に上がれないのである。
 メンバーが自殺してしまったが、それによってへヴンリーの持っている魅力が殺がれたというようなことは決してない。永遠の青春がここに封じ込められているし、この宝石箱はいつだって開けることができるのだから、僕らは思う存分楽しめば良いのである。

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The Pastels 「sittinpretty」

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 スティーヴンのよれよれした「うた」が好きだ。本人は真剣なのに、どこか情けなく響いてしまう彼のうたはとても素晴らしい。最近、彼はあまり歌わなくなってしまったのだが、パステルズの空気はいつも新鮮である。
 私はパステルズのよれ具合は、我らが工藤冬里の楽曲と似通った部分があると考えていたので、ジオグラフィックがマヘルのアルバムを出すと聞いたとき、妙に納得してしまったものだ。スティーブンと工藤氏の交流も、パステルズの新作のライナーで工藤氏自身が少し書いていたので、気になるという方はそちらをご覧ください。
 で、これはそんなパステルズのもっとも聴きやすいアルバム。ギター音も以前と比べるとやや轟音気味に鳴り響いているし、全体的にもポップにまとまっている。まさに黄金のギターポップ。きらびやかで美しく、そして下手なのにドラマチック。まさに理想の一枚である。
 もう一度、この時代のパステルズを聴いてみたいのだが、彼らはもうそんな場所にはいないんだろうなぁ、と思うと少し切ない。やはり感傷的になってしまうのは、これからもパステルズを聴く度に続くのだろう。失敗という概念がないのだから、彼らは常に成功者なのである。

投稿者 asidru : 20:56 | コメント (6) | トラックバック

似ジャケ

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 よくみると全然似てないのに、雰囲気やちょっとした色合いが記憶の中で交錯し、どっちがどっちだったかわからなくなるジャケットが存在する。
 そんな混同ジャケシリーズとしては、やはりこの「はっぴいえんど」と「Jガイルズ・バンド」が僕の中でよく間違えるジャケの代表格だ。
 よく見比べるとまったく違うのに、ニュアンスが似通っているというだけでどっちがどっちだか分からなくなる。タイトル文字を隠されたら、かなりの確率で間違えるだろう。まぁ、僕だけかもしれないけど。
 一度はっぴいえんどのこのアルバムを聴こうとしたら思いっきりJガイルズで、しかもしばらく気づかなかったなんていう事故も発生。人間の記憶というのはかなりいい加減なんだなぁ、と改めて実感した瞬間でした。以上。

 

投稿者 asidru : 14:22 | コメント (2) | トラックバック

紅蜥蜴 「けしの華」

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 最近になってリザードや紅蜥蜴の音源が再発しているみたいですが、あまり買う気になれないのはなぜなのでしょう。「黒い人形使い」とか結構好きなんですけどね。
 モモヨのキャラとかが原因なのかなぁ。あんまり影響受けませんでした。
 リザードのセカンドとかは結構好きで、一時期聞きまくっていたんだけど、やっぱり後に残らないというか、一時的なものとして通過してしまった気がします。
 あらためてこのアルバムを聴いてみたんですが、シティーロッカー盤よりこちらのCD盤の方がジャケが安っぽくて好きです。ブックレット裏の写真もギターポップみたいだし、なんだか不思議な一枚。で、内容はやっぱり紅蜥蜴で、リザードのデモといった雰囲気です。
 ロッククリティック(後の浅草ロック)とか、わりとノリのいい曲もあったりしてけっこう楽しめたし、別に悪いアルバムじゃないんだけど、あんまし人気無いですよね。
 私はかなり楽しめたのですが、万人にオススメはしないでおきます。

投稿者 asidru : 21:21 | コメント (2) | トラックバック

Neil Young 「Greatest Hits」

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 Like A Hurricaneを、へろへろなバージョンでカバーしたら、ようやくこの人のナチュラルな幻覚風景が見えてきた。ニール・ヤングはドラッグだ。それはとても深く覚醒するためのスタッフである。
 アルバム「ハーヴェスト」や「アフター~」もいいが、最近作での洗練されたロックもいい。すべてがニール・ヤングという規律の中で不気味に配置されているが、このベスト盤ではそれが無くなるのではないか? と往年のファンたちに危惧されたものの、出来上がってみれば素晴らしい選曲で、やっぱりニール・ヤングはいつの時代も変わってなどいないのである。
 選曲がいいというより、曲ひとつひとつが輝いている。そのためどれをどう並べても、ニールヤングという宇宙が完成する仕組みになっているのだろう。
 

投稿者 asidru : 17:58 | コメント (3) | トラックバック

マスターベーション

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 マスベは以前にも書いたけど、今回はOKレコードの編集盤について。
 最初に言っておくと、盤起こしなのかとにかく音質が悪いです。オリジナル盤の方が音はいいですが、ボーナストラックのライヴ音源が聴きたくて買いました。
 それにしてもカッコイイですね、卑龍氏のボーカル。うめき声系のボーカルってありそうで無いんですよね。で、あのどろどろのサウンドなので最高です。
 主に一枚目の曲がいいんですけど、久しぶりにきいたら「闇の中の子供達」とかもカッコよかったです。闇の中~は最初のベースラインでもうノックアウトでした。素晴らしすぎるバンドです。
 最近のハードコアの人にはあんまり人気無いけど、ここでの重苦しいサウンドこそが、昭和のハードパンクなのです。ジャパニーズHCクラシックとして、とても重要な一枚。
 

投稿者 asidru : 21:27 | コメント (18) | トラックバック

SAW

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 最近なんかこういうのばっか観てる気がする。そういう時期なんですかね…。
 これもキューブとか好きな人向けの映画だが、せっかく舞台設定などにこだわっているのに、これだけのストーリーでおしまいというのはもったいない気がする。
 まぁたった18日で撮影したのだから仕方がない、というか凄いのだけれど、せっかくのネタなのだから、もっと時間をかければよかったのに、と思ってしまう。
 予想外の展開、と予告かなんかで言っていたのだけど、すぐに大体の流れは予想できてしまうし、地味といえば地味な作品。でも今はこういうのが流行っているんでしょうね。
 物足りなさを感じない人にとっては極上のスリラーでしょう。あまり内容に触れるとそれだけでネタバレになるので言及しませんが、脚本自体は優れていると思います。
 うーん、何て書いたらいいかわかんないですね。
 とにかく観て、それぞれ感想を持ってください。損はしませんから。
 
 

投稿者 asidru : 21:17 | コメント (2) | トラックバック

New Order 「Blue Monday」

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 このキック音の連打が時代を変えた。まさに革命的な一曲である。
 現在のテクノやダンスミュージックは少なからず、この一曲を前提として作られていると言っても過言ではないし、いまだにクラブなどで根強い支持を得ていることからも、ニューオーダーといえばこの一曲であり、テクノ・ミュージックといえばこのキック音という訳だ。
 今夜また「ニューオーダー・ナイト」というイベントがあるそうですが、私は仕事でいけません。行った人レポートよろしくです。
 まぁ、イアン・カーティスの魅力が大きかったせいで、ジョイ・ディヴィジョンにのめり込み、ニューオーダーの方は深く聴いていない私ですが、たまにこの曲や「パーフェクト・キス」を聴いて小躍りします。ニューオーダーってあまり激しく踊れない曲のように思えるのですが、クラブとかでかかると不思議なくらい盛り上がるんですよね。最強のダンス・クラシックです。

投稿者 asidru : 20:45 | コメント (10) | トラックバック

奇形児 1982-1994

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 ADK時代からのコンプリート。奇形児はやはりヤスさんのボーカルの勢いが素晴らしいですね。きちんと歌詞が聴き取れるのもいいです。ヒロシさんのギターもメタリックですし、演奏能力の高いバンドだったと思います。
 で、これまたOKレコードからの編集盤なのですが、ドラムのヒロシマさんがこのレーベルやってるんですね。たしか高田馬場のエリアで物凄い動員数のライヴイベント(ヒロシマさん主催のマサミ追悼かな?)やったときがあって、そんときに過去のバンドの元気な姿が見れてうれしかった記憶があります。
 ヒロシマさん、いま新宿で焼鳥屋やってるってきいたけど、OKの方ももっとリリースしてほしいなぁ。こういう重みのあるリリースは大歓迎だし、すでにこれだけ凄いモノ出してるんだから、突っ走ってほしいんだけど…。
 奇形児の話に戻すと、とにかく初期の音源が強烈。音質もADKからのやつだけ妙にカッコイイ。路線的には一緒なんだけど、ADK特有のミックスがやっぱり良く聞こえてしまいます。そういえばADKってもともと「江戸っ子」って意味だったっけ…。なんか凄いです。

投稿者 asidru : 20:47 | コメント (2) | トラックバック

ザ・ダムド「地獄に堕ちた野郎ども」

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 最近働かない(就業という形で社会参加しない)若者が増えており、彼らはニートという呼称がつけられている。で、このニートというのは英語らしく、僕は学が無いので意味はよくわかりません。
 というわけでこのアルバム。地獄に堕ちたニートにぜひ聴いてもらいたい一曲目「ニート! ニート! ニート!」から、全編通して激しいパンクロックが迸っている大傑作。
 SGの音、叫び散らすボーカル、ドタドタと暴れるドラム、そしてうねり過ぎのベース。ダムドは当時の他のどんなバンドよりもパンクで、素晴らしい勢いを備えていた。現在、ピストルズやクラッシュは聴いたけどダムドは知らねぇ、という若きバンクスが多いが、ここにあるアグレッシブな楽曲を聴かずにパンクを素通りするのはもったいなさすぎる。だから「70年代の初期パンクってまず何を聴いたらいいの?」と聴かれたら、僕はこの一枚をぜったいに推薦する。
 ここまでストレートにパンクなら、初めてでも何の問題もないでしょう。もともと音楽できる人達だし、演奏もわりと上手かったりするのが微笑ましい。
 ダムドを未体験ならば、ぜひレンタルでもして聴いてみてください。そうすれば知らず知らずにニートから抜け出しているはず!!

投稿者 asidru : 20:06 | コメント (8) | トラックバック

GANG STARR

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 プレミアの活躍には感嘆せざるをえない。魔術が科学の力を借りて何が悪い? 彼の魔術は機材を通して増幅する。驚くべき音や、聴いたことの無いようなリズムが、いとも簡単に彼の手にかかれば出現してしまう。
 この音をヒップホップと定義してしまうことに戸惑いをおぼえたなら、それはプレミアの魔術にハマっている証拠だ。あまりにも深く、幅の広いサウンドであるため、単純にヒップホップの呼称ですませてしまうにはもったいない。
 強烈なオリジナリティが指し示している先には、まだ見ぬヒップホップの可能性が広がっている。

投稿者 asidru : 19:43 | コメント (0) | トラックバック

Foo Fighters

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 BIG MEのプロモの白痴っぷりが凄かった彼ら。最近新譜出したみたいですね。
 多分このバンドを語るとき、皆の脳裏にはニルヴァーナの影がチラチラするんだろうけど、実際はニルヴァーナ的な展開はしてません。音を聴いてもらえば分かるとおり、かなりポップで聴きやすい80年代風ロックなのです。
 デイブも、もともとは80年代の音楽を愛する青年だし、やりたいことが出来ているのだから素晴らしいと思います。パンクもハードロックもメタルもファンクも、全てを聴いて育った世代のロックなのだから、音に含まれている情報量はおびただしく、一枚でかなり楽しめる作品。
 と、なんだかんだで新譜聴きたくなってきたので、今度余裕が出来たら聴いてみようかと思います。Foo Fighters、まだまだ勢いを失ってません。
 

投稿者 asidru : 19:28 | コメント (0) | トラックバック

radioinactive 「pyramidi」

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 サイエンス・フィクションに思いを馳せるあまりに、ヒップホップでそういった世界を描いてしまった究極の作品がこれ。radioinactiveことカマルは、幼いころからこういった世界、とりわけ宇宙人に興味を持っていたという。radioinactiveという名も、少年時代に母からもらった本にちなんでのネーミングだとのことだ。
 このアルバムのスピリチュアルでノスタルジックな感触は、カマルという人物が培ってきたサイエンス・フィクションへの幻想そのものなのだろう。ショッキングな描写は無いが、充分に新鮮でクオリティの高い世界を構築しているため、音響的にも注目すべき一枚である。

投稿者 asidru : 19:09 | コメント (0) | トラックバック

LOBOTOMIA

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 ブラジリアン・ハードコアはどのバンドも素晴らしい。このロボトミアも、そんなブラジル特有のハードコアだ。なぜか日本盤が発売されていたが、もう売り切れ。ブラジリアン・コアがそんなに人気あるなんて知らなかった。
 音としてはメタリック・クラスト・コアと帯の文句にあるとおり、こもった音質の荒削りなハードコア。ただ音量がちょっと低いので、なるべくボリュームを上げて聴いて欲しい。
 歌詞もブラジル特有の環境が生み出した苛立ちが爆発したポリティカルなものなので、語学に明るくない人には日本盤の対訳を読むことをオススメします。

投稿者 asidru : 15:52 | コメント (2) | トラックバック

DIP THE FLAG 「FROG MAN」

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 DIP THE FLAGの中ではこれが一番聴き応えのある作品だと思う。
 やっぱり後のDIPとは全く違う音で、サイケデリック感覚はこちらの方が断然上。DIPになってからの轟音ギター的なアプローチも嫌いではないが、やはりこの時期の不可思議な感覚がDIP THE FLAGの持ち味としても最高峰だろう。
 この路線でもっと作品を発表してもらいたかったのだが、本盤も既に廃盤となっており、DIP THE FLAG自体に触れることが難しい環境になってしまっているのが残念だ。
 ライヴ盤の方もいいが、よりDIP THE FLAGらしさが出ているのはスタジオ録音の本作。整えられた音が歪んで聞こえるのは、彼らの狂気がダイレクトに封じ込められているからに違いない。
 重要なバンドだと思うのだが、DIPより評価されていないような気がする。もっと取り上げられるべき魅力はあると思うのだが、なぜだろう? 
 

投稿者 asidru : 22:11 | コメント (4) | トラックバック

G-ZET

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 タムのギターは重くて独特で、何といっても泣ける音だ。
 人それぞれ感じ方は違うかもしれないが、G-ZETのインスト曲は僕にとって物凄く切ない。よくメタルなどでは「泣きのメロディ」というような言い回しを用いることがあるが、僕にとってはタムのギターはそれに当たる。とても心に響く、あのこもったディストーションギターのリフは、日本におけるハードコア・パンクというものを全て表している。
 すべてをぶっ壊し、ずっしりと重く切りかかってくるタムのギターは、このG-ZETで完成しているのだが、突如失踪してしまったというのが気がかりでならない。理由はいろいろあったと思うが、もう出てきてもいいんじゃないかと思う。誰も彼のことを憎んでなどいないし、このようなCDが出るほどに、彼が残した功績というのは大きいのである。
 もしタムが戻ってきて、またあのギターを弾いてくれたら…、と何度も思った。多分日本中のハードコアファンが一度は願ったことだろう。 G-ZETが復活しないか、タムが戻ってきてくれないか、と。
 結局、タムは戻らなかったが、このCDはいまだに売れ続けている。後世へ彼のギターの音が伝わっていけば、ファンとしてはそれだけで充分満足だ。みんながこのアルバムを聴いて、カッコイイギターを体験することが、タムにとっても嬉しいことなんじゃないかと思う。

投稿者 asidru : 18:45 | コメント (6) | トラックバック

ZADKIEL

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 日本では珍しいモーターヘッドタイプのメタル。とにかくベースがヤバく、ぼこぼこに突っ走る破壊力満載な音がひたすら気持ちいい。
 で、このベースの人、諸田コウといいます。そうです、DOOMの諸田さんです。
 こんなカッコイイバンドやってたんですね。個人的にはDOOMより好きかもしれません。モーターヘッド直系のワイルドなロックが好きなら、このソノシートを聴いて損は無いハズ。
 諸田さんも亡くなってしまいましたが、彼のフレットレスベースの音と人柄を愛している人達はまだたくさんいます。ドゥームもいいですが、このザドキエルの瞬発力に僕は軍配をあげてしまいます。
 日本のメタルシーンというのは結構奥が深いんだなぁ、と単純に感心してしまう僕ですが、このような傑作がまだまだたくさん世の中には存在しているので、これからも掘り下げていきたいと思います。

投稿者 asidru : 22:34 | コメント (15) | トラックバック

金延幸子 「み空」

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 空を眺め続けると、ぽっかりと四角く切り取られる部分がある。
 そこはいつのまにか真っ黒になり、何も無い空間のように見える。
 ゆっくりと自殺し始めた水道の蛇口は、群れをなして時間を忘れた。
 み空。
 見てはいけないし、そのことを他人に話してはならない。
 そんな空もあるようで、私は諦念の前に勘違いをする。
 土着的な要素などいらない。そこで習慣を切り離すためのステップを考案してみてはどうか?
 あるいは、罪の背負い方を変えてしまえばいいのでは?
 くだらない発想は全て実現した。
 時にまかせて、我々はただ発案し続ければいいし、また我々はそれぐらいしか意味を持っていない。
 つまり、反省しなくとも良いのだ。

投稿者 asidru : 21:05 | コメント (0) | トラックバック

T-REX 「cosmic dancer」

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 この曲はあまりにも霊的であり、サイケデリックをもう一層深く掘り下げた地点で、今も不気味に揺れ続けている。マーク・ボランというシャーマンがいかに本物であったかを語ったならばキリがないが、この曲を一曲だけ聴けば全て了解できるだろう。
 宇宙は不定形だが、そこへ溶け込む我々は定形なのである。アルバム「電気の武者」が僕らに与えてくれた宇宙を、ゆっくりと傍観し、そしてその中へ泳いでいけば問題は無いのだ。
 僕は古びたインチキメーカーのギターで、この曲を何度となく弾いた。意識しなくとも、自然とリバーブがかかったように聞こえ、アンプもエフェクターも通していない音が、極めて美しく転がっていくヴィジョンに何度も驚かされた。そこがマーク・ボランの墓場であり、誕生の瞬間でもあるという事を考慮しても、やはり楽曲そのものの霊性がこのサイケ感覚の根源なのだろう。
 最近になって、T-REXのライヴ盤が出ていたが、どうにも聴く気になれないのは、かつてのアイドルを神棚の裏に隠蔽したくなるような庶民的な習慣が僕の身体に染み付いてしまっているからだ。まったく迷惑な慣性である。もう貧乏クサイことは言わないようにしていたのに…。
 振り向くと、押入れに隠していた筈のマーク・ボランが、ゆっくりと笑っていた。
 どうやら、初めから僕らは踊っていたようである。

 

投稿者 asidru : 22:13 | コメント (0) | トラックバック

ドッペルゲンガー

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 …素晴らしすぎる。
 最近見た映画の中ではダントツに面白い。
 黒沢清監督の映画は以前から大好きで毎回チェックしていたのだけれど、この映画のことはまったく知らず、先日たまたまレンタル店に入ったら置いてあったので、なんとなく借りてみたというわけだ。
 で、最初は地味な映画なのかと思ったのだが、黒沢清監督に限ってそんなことはしないだろう、という期待を遥かに凌駕する出来で、もう大満足。特に後半の流れは映画的なおもしろさが凝縮されていて、本作をただのサスペンスホラーだと思っていると度肝を抜かれる。
 こういう作品はあまり内容を書くと危険なのだが、ラストの方での柄本明や、ユースケサンタマリアと古びたミラーボールのシーンなどがもう最高に優れたものであることだけは言っておきたい。
 こういった映画が評価されないなら、そんな映画界は無くなってしまえばいい。この「ドッペルゲンガー」はずば抜けて面白く、優れた作品であるということを、もっと多くの人に知ってもらいたい。言いたいことはそれだけである。本当に良質な作品と出会うと、こういう素直な気持ちになれるのだ。
 「日本の映画はつまらなくなった」なんて知った顔をしている映画研究会の大学生みたいなヤツは、本作を見て絶望してしまえばいいし、二度と映画など観なければよい。確かに毒にも薬にもならないようなくだらない作品も多い。しかし、本当に面白い映画もこうして存在しているんだということを忘れないでほしい。
 ちなみに本作は黒沢清監督作品の中でもかなりの大名作である。個人的には「カリスマ」が一番好きだったのだが、「CURE」や「回路」も初めて見るならオススメ。その後に「ドレミファ娘の血は騒ぐ」あたりを観たりするのもいいかもしれない。とにかく、黒沢清という監督は素晴らしい作品を撮るんだ、と声を大にして言っている人間がここにいたこと覚えておいて欲しい。
 「ドッペルゲンガー」、純粋に好きです。

投稿者 asidru : 21:28 | コメント (6) | トラックバック

A Perfect Circle 「Thirteenth Step」

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 美しさを重さ(音響的にも精神的にも)で表現することにおいて、ここに一つの理想形が見える。TOOLのメイナードらが開始したこのバンドは、エモーショナルなへヴィ・ロックを新しいステージに持ち上げたように思える。
 TOOLが凄まじいへヴィネスを作り出していたため、A Perfect Circleも同じノリの音楽だと思われがちだが、こちらはTOOLのような絶望的へヴィネスでは無く、モダンな感覚をも備えたエモーショナルなロックである。ただ、どちらも圧倒的なまでの衝撃を兼ね備えているので、どちらが良いとか悪いとか言うのは好みの問題。
 本作は前作に比べて緊張感が増している。それはあまりにも悪夢的な窒息感なので、金縛りに良く合うという体質の人は聴かない方がいい。寝る前に聴くのもヤバい。なるべく脳が覚醒しているときに触れるべきだ。A Perfect Circleはオシャレだが、常用すると危険であり、依存性も高い性質の音楽である。
 メイナードという人の狂気は、ちょっとの接触ならこざっぱりとした印象を受けるが、そういうものほど強い毒を持っているということを決して忘れてはならない。

投稿者 asidru : 22:04 | コメント (2) | トラックバック

James Chance & The Contortions 「BUY」

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 James Chance & The Contortions、初来日!
 これは行くしかねぇ、と思ったのですが、当日5500円(ドリンク別)は高い! しかも3日とも思いっきり仕事あるし…。
 だいたい高すぎるよ、5500円も持ってないし、ノー・ニューヨークなのにそんなに高いのは何か間違ってる。こんなのパンクじゃねぇ、そんなコントーションズなら見なくていいや…。などと自分を誤魔化してものすごく虚しい気分を解消してみるのだが、結局のところJames Chance & The Contortionsが好きで好きで仕方のない僕としては、この「BUY」や「ノーニューヨーク」を聴いて我慢する他に道らしきものは残されていないのだ。
 James Chanceの暴れっぷりがよくわかる当時のライヴ写真などを観ると、あの時代のニューヨークを体験できた現地のパンクスたちが羨ましくてしかたない。パンクなのにJames Chanceはサックスを首から提げて叫び散らし、でたらめなサックスを吹きまくる。そのスタイルが妙にカッコよく、高校の頃はずっとコントーションズみたいな音を出すバンドをいつか組みたいと思っていた。フリクションはもちろんのこと、スターリンのミチロウなんかもJames Chance & The Contortionsから多大な影響を受けたと何かの雑誌で語っていた。そんなパンクの教科書であるJames Chance & The Contortionsが初来日するのである。これほどの大事件があるのに、金が無くて行けないという虚しさを、またコントーションズを聴いて紛らわすという、もうどうしようもない悪循環。まさに泥沼である。
 誰か観に行った人は詳細を教えてください。よろしくです。

投稿者 asidru : 17:55 | コメント (0) | トラックバック

片岡理

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 もう記憶の奥底に埋没していたため、この狂気に満ちた世界を再び垣間見るのは少し怖かったのだが、聴いてみればなるほど、そういうことだったのかと根拠の無い納得をさせられた。
 「寒いおでんは背中から」と「東京の新聞。」の二枚は、片岡理という異能を如実に語っている。
 音としては歪みまくったテクノポップだろうか? 奇怪な電子音と片岡氏の独特なボーカルが当時の自主盤の中でも群を抜いて異質。なんでこの音楽のことを忘れていたのだろう? としばし疑問に思いつつも、あまりに狂気に満ちたこの盤をターンテーブルに乗せた以上、もう逃げ道は無いのである。
 
 追記  ソノシートだと思ってたら、ちゃんとしたEPでした。

投稿者 asidru : 17:21 | コメント (2) | トラックバック

POISONOUS CROSS GIBBET 「LAST SHEET」

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 やっぱりこの人達はカッコイイ! たしか千葉のバンドだったかな?
 ハードコアだけどポップで独特の味を持ったバンドです。
 これはライヴ盤だけど、最初のソノシートも必聴。
 P.C.Gの音源、まとめて再発してくれるというウツワのでかい人募集。というかソノシート二枚しか出してないので、他の音源があったら聴いてみたいです。
 「VIOLENCE ARMY」や「偽りだらけのリアリティ」といった名曲を聴くと、このバンドの音源が少ないことが悔やまれて仕方ない。本気で再発してほしいです。

投稿者 asidru : 15:56 | コメント (2) | トラックバック

フィリップ・K・ディック 「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」

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 ブレードランナーの原作だから、ディック作品の中でもわりと知られている本作。いまさら何を語ろうというわけでもないので、今日は羊について。
 最近羊がアツイ! もちろん個人的にですが。
 あの形や生き物としての存在がとにかく面白いのである。なんであんなにフワフワした毛なのだろうか? このままでは羊マニアになりかねない。
 で、さらに興味をひくこんなニュースもあって、ますます羊の不可解なイメージに翻弄されてしまう。
 眠れないときは羊を数えるという儀式も各国に存在している。
 羊が一匹、羊が二匹、…と、なぜ羊なのだろうか? まさかsheepとsleepをかけただけです、なんていう言い訳じゃ気がすまない。今こそ羊の霊性に注目しなければならないときなのではないだろうか?

 

投稿者 asidru : 15:26 | コメント (0) | トラックバック

THE BLUE HEARTS 「Train-Train」

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 このひとたちのアルバムはあまり聴いていないのですが、なぜかこのメジャー3枚目は好きです。というより「僕の右手」を聴くと、グールの故マサミさんのステージングを思い出してしまうという、ハードコアファンにとってはとても切ないアルバムなので大推薦です。
 音自体も格段に進化していて、タイトル曲は真島さん作なんですが、他のメンバーも全体的にまとまりのある感じになっている時期だと思えます。
 オリジナル盤を手放してしまった私も「青空」と「僕の右手」を聴く為だけに、つい三年くらい前にツタヤでレンタルしてみたんですが、やっぱり切ないアルバムでした。暗い気分の時は聴けないです。
 最初の頃のクラッシュみたいな感じも嫌いじゃないですけど、私は中期を支持します。結構一枚選ぶのに悩みましたが、聴き込むとあまり青春パンクっぽさは感じられなくなるのが不思議です。マーシーのブルース調の曲が心地よく、そこいらの青春パンクバンドとはまったく別モノだったことに気がつけたというのが、今回は良い発見だったと思います。

投稿者 asidru : 14:19 | コメント (13) | トラックバック

おニャン子クラブ 「キックオフ」

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 殺人級のナンバーがずらりと並ぶおニャン子クラブの1stアルバム。うなりまくるベースに全てを破壊するボーカル。発禁になった1stシングル『セーラー服を脱がさないで』ももちろん収録されている。
 今あらためてメンバー写真をながめてみると、けっこうヤバいルックスの子(名前は伏せておきます)も何人かいて、あのヒットは何だったのだろう? と考えさせられる。
 ただ、楽曲のセンスはやはり良く、この名盤が理解されないようなら日本でのパワーポップなんて意味を持たない。独特のメロディーとサウンドは今でも多くのフォロワーを生み出しているが、追従者と異なっているのは、やはりその適当な姿勢だったように思う。
 おニャン子の暴力性は狂気的ともいえるぐらいの「適当な姿勢」にある。素人の集まりが今までうたったことのないうたを歌うのだから、そこから幻想的に高められたアナーキズムが発生しても何ら不思議なことではないのである。ただ、そのアナーキズムの威力が絶大であったがゆえに、今日におけるアイドルソングという名の反社会的な音楽は、この一枚に収束されるのだ。
 日本という島国で勃発したもう一つのパンクムーブメントの、これは開始のキック・オフなのである。
 

投稿者 asidru : 21:25 | コメント (6) | トラックバック

Swans 「Cop・Young God ・Greed ・Holy Money」

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 不可解な闇の存在であるスワンズ。このアルバムは彼らの二枚組み初期音源集なのだが、とんでもなく重いインダストリアルナンバーが詰まっていて、CD二枚通して聴くと確実に圧死する。
 音質としては80年代とは思えないほどの重量であり、へヴィロックなんていう言葉はスワンズのためにあるようなものだ。位置づけとしては、昨今のラウド系のバンドと、かつてのノー・ウェーヴの間を埋める重要な存在であると思う。
 ニューヨークの暗部にこのようなバンドが蠢いていたという事実は、決して軽視してはならないものである。彼らの音は明らかに新しかったし、当時の誰にも真似できない危険な香りを放っていたのだ。スワンズを無視するようなロック史は、天皇のいない日本史と同じなのである。

 詳しく知りたい人は彼らのオフィシャルサイトへ。
 
 

投稿者 asidru : 21:19 | コメント (2) | トラックバック

タコ

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 何回聴いたかわからない。おそらくタコ(山崎春美)の影響が無ければ、私は音楽など聴き続けていなかったかもしれない。本作とセカンド12インチは何回か手放したが、何回も買い戻した。音飛びしまくって売り飛ばした後に、ものすごく状態の良い盤を入手したので、現在持っている盤が私の墓まで連れて行くレコードとなるだろう。ブートのCDは聴いていない。

 最初に山崎春美という人物を知ったのは『ヘブン』だったか。限りなく分裂症に近い文体は、簡単に狂気と呼ぶにはもったいない魅力に満ち溢れていた。その後『遊』の「は組」という特集で彼の才能が本物であることを改めて痛感。そして『宝島』誌上での「反渋谷陽一キャンペーン」によって、私の中での山崎春美は神格化されてしまった。

 ガセネタのアルバムもいいが、本作での山崎春美のイメージの豊かさは特筆すべきものがある。参加しているゲストも、坂本教授、町蔵、佐藤薫、ロリ順、工藤冬里、スターリン、宮沢正一、香山リカ、篠田昌巳、大里俊晴、成田宗弘などと豪華過ぎる面子。ジャケは花輪和一、曲間の怪しいアナウンスは細川周平で、発音があきらかに間違っているのはご愛嬌。
 これだけの豪華面子を山崎春美という天才がまとめているのだから、アルバムの完成度は聴かずともわかるであろう。音楽的にはセカンドの方が抜きん出ているが、山崎春美初体験ならば本作から聴くことをおすすめする。ただ、オリジナル盤もブートCDも今は異常に高いので、どうしても欲しい、という場合以外は手をださない方がいい。
 
 タコの持っていた感覚は、分裂症気味のシャーマニズムである。サイケデリックな要因は単純に薬物による作用なのだが、本質の部分では古代の儀式的背景が横たわっているように思える。そこに山崎氏のピュアな狂気が土足で踏み込んでくるために、景色はつんのめって七色になる。音楽表現として極北なのではなく、新しい感覚としてのカルチャーだからこそ、タコの音楽は現在でも生々しく聴こえるのだ。
 

投稿者 asidru : 14:16 | コメント (2) | トラックバック

安部公房 「箱男」

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 箱とは何なのか。
 外部と内部を作り出すためだけの装置ならば、別に箱にこだわらなくとも良いのだし、このような奇怪な物語が展開されることもなかっただろう。
 安部公房はヒーローだった。みんな『壁』や『燃え尽きた地図』を読んで、その世界に震撼した。
 僕もそんな読者の一人だった。
 本書や『S.カルマ氏の犯罪』のように、暴力的に匿名化された主人公の存在は、よく比較されるカフカとはまったく別の性質を孕んでいる。そこが安部公房という作家の魅力だ。
 象徴としての主人公。シンボライズされ過ぎた物語の中心的視点は、ただ冷ややかに状況を観察し、作者によって転がされる。あたかもモノのように、実在するフィクションのように、である。
 芽吹いた感覚は麻痺に似たリアリティの質感であり、箱男やカルマ氏は幻想の内部でリアリティに接触する。つまりは虚構の行き過ぎた混沌である。抗えるものは安部公房ただ一人の独裁政治が顔を覗かせている。
 本書は、ロマンに溢れた物語というのは、このような構造をもってしても可能なのだということをいまさらながらに実感できる良書である。小学生には夏休みにぜひ読んでもらいたい一冊だ。
 読後はもう、どうやって逃げたらいいのかが、よく分かるようになってるはず。

投稿者 asidru : 21:25 | コメント (6) | トラックバック

頭士奈生樹 「PARADICE」

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 小人の魅せる深淵の風景は、現実的な要因での絶望や希望とはかけ離れている。ピグミーは幻想の中で生き続けるために、結界に似た呪術的防御網で自らの存在を守っているのだ。
 頭士奈生樹という素晴らしい音楽家がいる。これは彼の1stアルバムであるが、以前にも最初期の非常階段やハレルヤズなどに参加していた。
 そんな、アンダーグラウンドの世界では割と知られた存在のミュージシャンであるが、本作はアナログ限定500枚であったため、まだ聴いたことの無いという人たちの方が圧倒的に多いと思う。そんな中、つい最近になって突然彼の3枚目のアルバムが発表され、本作も同時にCDで再発された。私はオリジナル盤を持っていたが、もちろんCDも買った。そして最近は毎日聴いている。
 頭士奈生樹の宇宙は限りなく幻想的であるし、彼のうたは限りなくやわらかい。深いギターサウンドが描き出す風景は、懐かしく美しい、見たことの無い場所なのである。
 本盤のような秀作が理解されないならば、サイケデリックはもうおしまい。でも、ここにあるような素直な楽曲ほど、評価されにくいものなのかもしれない。純度の高い物質ほど、周りに与える影響は多大なのだから。
 

投稿者 asidru : 20:47 | コメント (0) | トラックバック

サニーデイ・サービス 「東京」

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 初期の頃のサンプリング多用なギターポップサウンドが好きだったんだけど、いつのまにか曽我部氏の趣味丸出し60~70年代フォークサウンドに急変したこの「東京」。特にはっぴいえんどの影響が色濃いのですが、ここまで好きなことをやれるというのは一種の才能ですね。
 このアルバムの後も若松孝二的な世界や、URC的アングラフォーク世界に触発された曽我部氏の独自の音楽観は深まっていく。よっぽど好きなんでしょうね、こういうの。僕も嫌いじゃないです。
 ソロになってからは全然聴いてないんですが、まだこの路線なのでしょうか? だとしたらある種偉大ともいえますね。
 このアルバムと「若者たち」はわりと聴いたのですが、未聴ならばこのアルバムから聴いてみてください。曽我部氏の趣向がよくわかると思いますので。
 
 

投稿者 asidru : 21:40 | コメント (6) | トラックバック

宮沢正一 「キリストは馬小屋で生まれた」

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 決定までのプロセスに特定の意思が介入してしまうと、それは本当の意味で決定などしていないと言える。意思は介入しただけであるが、こういう場合においては本質となる。
 キリストがどこで生まれ、どこで死んだか。
 それは、その問題を考える人間の数だけの解答が用意されているのだ。
 だから、竹内文書と戸来村の関係およびキリストが日本で死んでいたという説を目の前に提示されたところで「へぇ」とか「ふーん」としか答えられない。竹内巨麿の作り出した妄想だ、といって糾弾してもいいし、キリストの墓参りに青森県へ旅立つのも不正解ではないだろう。
 宮沢正一のうたは、メルヘンと現実を同質のものとして溶解させてしまう。このソノシートのA面「キリストは馬小屋で生まれた」にしろ、「ぼく」というのはどういう人物なのか? ということに関しての余計な説明は一切していない。この隠蔽の技術によって、奇妙な恐怖に似た感覚が聴き手を襲う。
 アシッドフォーク、と一言で済ませてしまうには、あまりにも深すぎる内容なので、機会があれば一聴してほしい。再発されたCDも現在では廃盤なのだが、根気良く中古店をまわったとしてもこれは聴くべき、そして聴かれるべき一枚である。
 

投稿者 asidru : 05:01 | コメント (4) | トラックバック

SAINT ETIENNE  「FOX BASE ALPHA」

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 打ち込みなので、ネオアコではないのだけれど、なぜかネオアコの棚にずっとおかれていた本作。
 結構聴きました。しかもかなり好き。
 ただジャケットの女性が何者なのかはいまだにわかりません。誰?
 知ってる人募集。
 この時代の打ち込みにありがちな感じですが、オシャレできれいなポップスです。さっきまでSICを紹介していた私が言うのもなんですが、これは癒されます。
 立て続けにハードコアを聴いた後や、ポップな気分に浸りたいときはいつもこれ。
 定番です。

投稿者 asidru : 22:55 | コメント (0) | トラックバック

SIC

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 日米混合バンドで、音はジャパニーズスラッシュ+外人シャウト。とにかく強力だったこのバンドについていた形容詞は「スプラッターコア」だった(かな?)。
 スケーター系のスラッシュサウンドだけど、ジャップな香りと海外っぽい勢いが混ざっているから独特の緊張感を保っている。
 つい最近、突然このコンプリートアルバムが出た。ちょっと高かったけど、思い切って買ってみた。そしてじっくりと聴いたところ、やっぱりハードコアはカッコイイなぁとしか思えず、虫歯ごときで憂鬱になっている自分が情けなく思えてくる。
 これ聴いて夏は乗り越えます。
 ところでLSDの再発がまた延期してるというのはどういうことだ!
 まぁ出るならいくらでも待つけどね。
 それまではこのアルバムでぶっ飛ばしていきたいです。

投稿者 asidru : 21:51 | コメント (4) | トラックバック

5X

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 最近虫歯に苦しめられている。
 親知らずが激痛で仕事もままならない。
 何度か治療に通っているのだが、いまだに完治しないので毎日地獄のようだ。
 5Xはそういうときにこそ聴きたくなる一枚だ。カルメンマキのボーカルは歯科医を思い出させるような何かを秘めていると思うのは、多分僕だけでしょうけど。
 虫歯の時は5X。今後はそんなことをつぶやきながら頑張ります。
 奥歯痛ぇ。

投稿者 asidru : 21:05 | コメント (4) | トラックバック
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