頭士奈生樹 「PARADICE」

パラダイス.jpg

 小人の魅せる深淵の風景は、現実的な要因での絶望や希望とはかけ離れている。ピグミーは幻想の中で生き続けるために、結界に似た呪術的防御網で自らの存在を守っているのだ。
 頭士奈生樹という素晴らしい音楽家がいる。これは彼の1stアルバムであるが、以前にも最初期の非常階段やハレルヤズなどに参加していた。
 そんな、アンダーグラウンドの世界では割と知られた存在のミュージシャンであるが、本作はアナログ限定500枚であったため、まだ聴いたことの無いという人たちの方が圧倒的に多いと思う。そんな中、つい最近になって突然彼の3枚目のアルバムが発表され、本作も同時にCDで再発された。私はオリジナル盤を持っていたが、もちろんCDも買った。そして最近は毎日聴いている。
 頭士奈生樹の宇宙は限りなく幻想的であるし、彼のうたは限りなくやわらかい。深いギターサウンドが描き出す風景は、懐かしく美しい、見たことの無い場所なのである。
 本盤のような秀作が理解されないならば、サイケデリックはもうおしまい。でも、ここにあるような素直な楽曲ほど、評価されにくいものなのかもしれない。純度の高い物質ほど、周りに与える影響は多大なのだから。
 

投稿者:asidru 2005年07月05日 20:47

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