安部公房 「箱男」

安部公房.JPG

 箱とは何なのか。
 外部と内部を作り出すためだけの装置ならば、別に箱にこだわらなくとも良いのだし、このような奇怪な物語が展開されることもなかっただろう。
 安部公房はヒーローだった。みんな『壁』や『燃え尽きた地図』を読んで、その世界に震撼した。
 僕もそんな読者の一人だった。
 本書や『S.カルマ氏の犯罪』のように、暴力的に匿名化された主人公の存在は、よく比較されるカフカとはまったく別の性質を孕んでいる。そこが安部公房という作家の魅力だ。
 象徴としての主人公。シンボライズされ過ぎた物語の中心的視点は、ただ冷ややかに状況を観察し、作者によって転がされる。あたかもモノのように、実在するフィクションのように、である。
 芽吹いた感覚は麻痺に似たリアリティの質感であり、箱男やカルマ氏は幻想の内部でリアリティに接触する。つまりは虚構の行き過ぎた混沌である。抗えるものは安部公房ただ一人の独裁政治が顔を覗かせている。
 本書は、ロマンに溢れた物語というのは、このような構造をもってしても可能なのだということをいまさらながらに実感できる良書である。小学生には夏休みにぜひ読んでもらいたい一冊だ。
 読後はもう、どうやって逃げたらいいのかが、よく分かるようになってるはず。

投稿者:asidru 2005年07月06日 21:25

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コメント: 安部公房 「箱男」

うへぇ、森本さんがこうまで書くのなら
やっぱりこの本いまさらだけど読むべきかなぁ。

箱男、といえばスラッヂを思い出したりもします。

投稿者 Y : 2005年07月06日 22:05

文庫で安いので、ブックオフとかであれば買いです。
確かにスラッヂ思い出しますね。
早くディップ・ザ・フラッグ紹介しなきゃ…。

投稿者 森本 : 2005年07月06日 22:10

ジャジャッ ジャジャッ ジャジャッ ジャジャッ ジャジャッ
ですね(笑)>dip the flagのほうのスラッヂ

スラッヂはred crossが好きです
dip the flagもカヴァーしててそっちもいいですけど
やっぱり片岡理の迫力(狂気?)には及ばないですなー

本、さがしてみます。親しい人が古本屋の店員なので。

投稿者 Y : 2005年07月07日 19:27

片岡理さん、ソロのソノシートすごい好きでした。
Pにも少しいましたっけ?
なんか懐かしいです。

投稿者 森本 : 2005年07月07日 19:40

ん?PってP−MODELのこと?
そしたらそれはひょっとして横川理彦さんのことでは?
ちなみに横川理彦さんのREってソノシートなら持ってまつ。
でもって針落としてない。
ちがかったらごめんちょ。

投稿者 Y : 2005年07月07日 23:36

あ、そう横川さん!
ごっちゃになってましたー。スラッヂはEPで持ってます。ソノシートじゃないや!
で、片岡さんは別の何かのバンドにいた気がしますが、もう記憶がめちゃめちゃです。
ヤマジさん、当時そうとう好きだったみたいですね、スラッヂ。

投稿者 森本 : 2005年07月08日 00:27

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