世の中の右と左そしてうしろ 暗がりで笑う人をみたときや 銀行のATMで現金を取り忘れたときに なんとなく読むブログ
カテゴリー:ニューウェイヴ
不気味な、不可解なもののイメージを、決してコミカルにすることなく「違和感を違和感として」楽しませることの出来るイメージとして生成していたのがこのバンドである。
なんとも不思議としかいいようのない、不気味でポップなニューウェイヴサウンド。まさに隠れた名盤の名に相応しい出来である。
最初からコンセプトを背負って出てきたバンドよりも、こういう他者から見て理解の及ばぬようなオリジナリティを持っているバンドの方が印象的だ。アヴァンギャルドとポップを繋いでいるものがここにあるような得体のしれない存在なのだということを、音楽好きは見過ごしがちである。
「かごめ」という日本の土着的な言葉の発音が結果的にここにある世界の入り口としては分かりやすいヒントとなって転がっているが、そのカギを拾ってしまうと、もう後戻りは出来なくなっているというのも素敵な要素の一つである。
ポストパンク、ノーウェーヴ系の再発が盛んだが、この盤について誰も触れていないというのはどういうことなのだろう。
METABOLISTは最高に重苦しい思考の絞りカスのようなものが、鼓膜から脳へ侵入してしばらくまとわりついているような音楽である。いわばウィルス式のポストモダニズムなのであろう。
この時期にしかできなかった、究極的な演奏。これをちょっとした遊び心、もしくはロックカルチャーの寄り道だなどと軽視していると、いつのまにかこちらがメインストリームとして機能していたりするかもしれない。
このレコードが再発されないのは、意識的な絶望の回避ではなく、ただ単に知名度が低いだけだと思っておきたいものである。
不登校の子供のいる一家には必ず一枚欲しい大名作。
ここにある音を聴いて、音楽を拒絶しているかのように感じるならば、それはまったくの誤認である。
ディス・ヒートの感覚の根にあるものは一種の偏執的な変質だ。徹底的に突き詰めた上で周囲の状況や聴いた者の感覚を変化させていく。
そんな演奏が、まるで呼吸を止めて体温を奪うかのような作用を聴き手に及ぼしたとき、ディス・ヒートの本音のようなものがようやく伝達される。その瞬間に聴き手が「今音楽を聴いている」という自覚を完全に捨て去ってしまう状態になることが、このレコードの恐ろしいところだ。
呪術的であるが数学的な様式も見え隠れしているこの音は、しばらくの間廃盤が続いており、熱心なファンに歯がゆい思いをさせていたのであるが、先日突如として紙ジャケット使用で再発された。私はアナログ盤と以前出されたCDを一枚づつ持っていたので、まだ今回のものは買っていないが、いずれは購入してみたいと思う。
この次のシングル、Health & Efficiencyでは少し分かりやすいアプローチに変化しつつも、このファーストにあったディス・ヒートの魅力を発展させていたことに驚いたし、更にセカンドDeceitにおいては、60年代のロックが保有していたサイケデリックのグロテスクな部分を拡大して身に纏ってすらいた。このバンドについて下手な説明はまったく必要が無いし、彼らの音はそれを望んでいない。
ここで書けることは、ディス・ヒートというものが存在している、ということだけに留めておこうと思う。
あとはそれぞれが体験すればよいことなのだから…。
五番目の「NO NEW YORK」として伝説となっているTheoretical Girls。
突然こんな編集盤が出ていたので思わず手を伸ばしてしまったのだが、グレン・ブランカのバンド時代の録音が聴けるという意味でも非常に貴重なアルバムだと思う。
やみくもに音を出すのではなく、ある種の信条、思惑などがしっかりと環境として根付いているからこそできる壮絶な演奏がバッチリ収められている。
曲はノイズそのものな実験精神に溢れたものから、直球のパンク、現代音楽のイディオムを利用したものなど様々であり、どれも確かな手ごたえを感じさせる良質な音源集だ。
まぁ、NO NEW YORKのバンドが好きなヒトには一瞬ツメの甘いバンドだと思われてしまうかもしれないのだが、よく聴けばここにある冷徹なまでの実験精神が異常なものだというのが理解できるだろう。一聴しただけでは「よくあるニューウェーヴ」でしかないが、この楽曲と演奏者の間にある不思議な距離感覚が絶妙なのである。
純粋にNO NEW YORKのバンドやソニック・ユースが好き、というだけならば、このバンドには触れなくても大丈夫。ただ、得体の知れないこのバンドのエクスペリメンタルな姿勢を垣間見たいならば、何が何でも聴くべき一枚である。
私個人としては大名盤だと思う。
初めから無かったのか、それとも本当は有機的なカラクリで活動していたのか。ニューヨークの地下で蠢いていたものが、ここにあるような灰色の希望であったならば、天国はわりと近くにあるのかもしれない。
モダニズムを逆から透かして見る技法を身に付けたければ、まずはここから。驚くほど純粋な素朴さが逆に存在を犠牲にしてまで立ち上がろうとしている。
そもそも、孤立と消滅は違う。DNAの孤立は決して消滅ではなかったが、存在の自殺は経ていたのだろう。亡霊のような印象が蓄積されていくなか、目に見えて立ち現れるのはまごうことなき死という幻想なのである。
ここにある音は今後絶対に消費されることはない。そして喜劇的にデフォルメされることも許されない。DNAは墜落したミュージックを別の次元から嘲笑しているのだ。
頽廃が罪悪ならば、あらゆる文化は炎につつまれ、そして消えてしまえば良いのである。
くすんだ色の熱気球が落下していく様子を見ながら、彼女はハンバーガーを頬張る。
ベンチの下には得体の知れない乞食の子供が潜んでいるが、別に何かを狙っている訳ではなかった。獲物を狙うならば、このような公園ではなく、山や森林、そして都会へ赴けばよい。獣や植物や人間を獲って食らえば、彼らが低年齢のまま死んでいくなんていう現実は起こらないからだ。
断絶の風景が時として彼女の瞳には緑色に見える。
モダニズム×ダダイズムだと思うと、そのような視覚の変容も日常的に繰り返される。
「ANOTHER GREEN WORLDはここでしょうか?」
口から胃袋を吐き出しているようなグロテスクな老人が彼女に尋ねる。けれども、彼女はイーノが既に死体にしか興味を持っていないことを知っていたので、老人に対しては無言で押し通す。
この時代のイーノはまだ別世界を信じていたし、生きた音楽を知っていた。カラフルなのに落ち着いた色調。イーノは音楽を生かしておく術も心得ていたのだろうと彼女は考える。
しかし、「NO NEWYORK」のあの時間が彼を殺してしまった。
いや、正確に言えば彼が音楽を殺す術を身につけてしまったと言えるだろう。
音楽の死骸から流れ出す血液を、イーノは無慈悲に洗い流し、新しいイメージとして作り変えてしまう。本質が死臭漂うモルグのような暗澹たる雰囲気の地平から生まれたなどとは、イーノの音楽を聴くものには届かない。
「だからイーノは表面的には変わっていないように見えるのです」
彼女はいつの間にか声に出してそう言っていた。
崩れ落ちた老人の死骸を、ブライアン・フェリーの引くリアカーが回収する。
それからというもの、彼女はANOTHER GREEN WORLDのことを考えると、いつも腐った肉のニオイがするようになったのである。
なかなかに実直な音であった。自己への贈与ではなく、他者への提案として純粋に機能しているレコードなんて、今はあまり見かけなくなっている。
テレグラフレコードのことが好きなのは、その純粋な製作姿勢があるからで、当時の自主レーベルの中でもかなりマジメな印象を受けるのだ。
そんなテレグラフから出た、堅実そうなニューウェイヴバンドがこのあけぼの印。
スタイリッシュさが足を引っ張らないのは、それがあけぼの印というグループの核であったからだと思うし、実際に演奏もしっかりしている。
こういう真っ直ぐな姿勢の音楽が最近少なくなっている気がしてならないのは、ただ単に私の視野が狭まったからであろうか?
世間の流れというものが、妙に早く感じられる。
コンピレーション。ヤン富田やカトラ・トゥラーナ、ハネムーンズなんかが参加しており、とても深いところの音楽で全体的に薄暗い感触。
商業的なテクノポップが道化的感覚を保有していたのに対し、ここにあるようなニューウェーヴは退廃美から生まれる新しい感覚を求めていたように思える。
クールではなく、シュール。しかしそこからファニーな感覚を取り除いているがため、奇怪な造形が露出している。
日本という島国で生まれる異質な音楽は、他のフィールドから見てもやはり特異なのであろうか。海外でもこういったレコードは人気があるらしく、日本にはこのような盤が溢れかえっていると思われていそうだが、実際日本に住んでいる我々でさえ見たことの無いようなレコードが海外で取り引きされているのを見ると、そこに異論など唱えられるはずもなく、どうにも複雑な気分である。
せっかく日本にいるのだから、母国の音楽くらいは知っておこうかな、と思ってから様々なレコードを買い集めるようになってしまった。これはその内の一枚である。
廣木隆一かなんかのピンク映画をせっせと見に行った高校生のとき、薄汚れたポルノ映画館の汚いスピーカーから流れたのがこの印象的な音楽。いったいこのポップでアンニュイでオルタネイティブな音楽は何? と映画の内容などろくすっぽ頭に入らずに、上映中ずっと曲のことを考え続けた。クレジットか何かに「D-DAY」と書いてあって映画館を飛び出してすぐにD-DAYという人達のレコードを探しまくった。
で、中古ラックに300円で売られていたのがこれ。
間違って買ったかも、とおそるおそる針を落とすと、まさにあの音が流れ出したので思わずガッツポーズ。その後、僕はこれを何度も聴き続けた。
当時ゼルダとよく比較されていたみたいだけど、全然別物。こっちの方が個人的には好みだし、雰囲気が薄暗くて良いです。カワキタさんのボーカルは線が細くて音と妙にマッチしているし、曲そのもののセンスも抜群。ただ、このバンドを知りえたのがピンク映画だったことで、これを聴くたびに映画館の暗闇とあのすえたニオイを思い出してしまうのが難ではあるが。
ニューウェーブの香りのする本作は、スマート・ルッキンからの81年作ソノシート。
でも、多分誰も知らないよね。
一応、ひねくれたテクノポップとか好きな人にはオススメな内容。
ネットで検索してみたけどまったく反応せず、僕もべつにこのバンドに関しては何も知らない。ただ、こうして一枚のソノシートをせっかく聴く機会に恵まれ、ターンテーブルにのせて、それがなかなか良い内容だったのだから紹介してもバチはあたらないでしょう。もう僕はこのソノシートに対しての礼儀は果たしたので、あとは見つけた人が聴いて判断してください。
一言でいうと女性ボーカルのニューウェーブ。好き嫌いはあるだろうけど僕は好き。ただそれだけ。
ゼロといえばこれですね。
再発・再結成(?)までしてるので、現在は接しやすい音源ですが、
一時期はやたら高くて、僕は近所の古本屋でなぜか500円で売られていたのをたまたま入手したラッキーボーイでした。おそらく持っていた人は死んだか再起不能の病に冒され、遺族に売り飛ばされたというのが真相だと思いますが。
変身キリンといえば「日本のヴェルベッツ」とまで言う人が居たくらいドリーミーな楽曲が多いわけですが、この一枚目はものすごくカッコイイポップサイケ風パンクです。
本田久作は阿木譲のロックマガジンに「宮沢賢治、稲垣足穂、ジェームス・ジョイス、世阿弥のようなRock Band」としてメンバー募集していたらしいですが、まさにそんな感じのバンドになっているので、そういう世界が好きな人はぜひ聴いてください。
ひとひらの偽善に振り回された男が斜面を登る。
皆が下りてくる斜面を、男はいつまでも登り続ける。
空間に圧搾されるべきか、状況に窒息するべきか。
誰に問うわけでもなく、男は解決策を提案し、壁の中の議長へ爆弾を手渡す。
はじめから壊れていた家畜小屋に似たシステム。
それらがひそひそと相談し、実行する。
死んだ鳥の目がうっとりとする。
冷たいマンホールの蓋が下水で温まるまでの間、狂ったように静かなこの部屋で、選挙権を売り飛ばすことだけを考え続けた。
一日が始まる前に終わっても、そういうこととして片付けるだけの判断力が、人民には不足している。
11セント綿、40セント肉。名曲「スローターハウス」を聴くたびに夜の街のニオイを思い出す。懐かしいゲーム喫茶のニオイ。ゼビウスでどれだけ高得点を出せるかチャレンジし、結局開始二分で100円玉を使い果たすニオイがここには充満している。
ところでゼルダをコピーしてたギャルバンてブ×とかデ×ばかりなイメージがあるよね? しかも演奏下手だからゼルダじゃなくてシャッグスになってるという、そんなこの世の終わりみたいにパッとしないコピーバンドをたくさん生み出したと思うよ、ゼルダは。別にゼルダが悪いわけじゃないんだけどさ。
僕自身、ゼルダ自体は好きなんだけど、ゼルダのイメージというか、80年代クサさがとっても嫌。だからゼルダを良く聴いてましたなんて今まで人前で言わなかったし、ゼルダの載ってる宝島も全部売り飛ばした(たしかサヨコが普通に街で買い物をするというだけの記事があって、そのいい加減な企画に爆笑した記憶あり)。
しかしながら、このアルバムだけはどうしても手放せず、いまだによく聴く。そして聴きながら「11セント綿~」などと一緒に口ずさんで過去を振り返っては、イヤな気分を味わって絶望する。そんな名盤。
この人の音楽ってこの1枚目しか知らないんだけど、この後もいろいろ出してるんですね。いわゆる音響系ポップスなのかな? わりと聴いたんですけど、僕のようなお洒落センスゼロの人間には深く理解することができず、そのまま実家のCD棚の奥底へ埋もれてしまいました。
で、さっきヤフーオークションとか何気に見てたらこのアルバムが異常に高い値段で売ってるではありませんか! 写真はその出品のやつからパクリました。このCDにそんな価値があったなんて!
当時音響系のレコードショップとかノイズコーナーとかになぜか置かれていた本盤。あまりの場違いさというか、奇妙な違和感が面白くてなんとなく買ってみたのだが、内容はアヴァンポップ(適当です)でクオリティは高かったと思う。何よりツジコノリコという正体不明のシンガーが非常に強い存在感を持って歌っていることに驚いた。自主製作な香りがプンプンする本作だが、音はメジャー風。音質もアレンジもグッドでした。