世の中の右と左そしてうしろ 暗がりで笑う人をみたときや 銀行のATMで現金を取り忘れたときに なんとなく読むブログ
カテゴリー:へヴィ&ラウド
重い。
メルヴィンズと言えば重くて遅い。
それだけである。
一聴して充分に呪術的な印象を受けるのであるから、これを受け入れるか拒否するかは聴き手の自由。限りなく窒息感に溢れた美しい音楽である。
暫定の中で満足もできるし、未知の不可解に怯えることもできる。
許容範囲内にメルヴィンズを収めるか、それとも外すか。二者択一で違う結果が用意されているわけだが、どちらにしろ頭痛の時は聴かない方が身のためだ。
メルヴィンズを聴いて船酔いのような気分になれば、きっと未知の体験ができると思う。いわば90年代のサイケデリック。知覚の扉を開けるためのステップだと思えば、初めて聴いた時の苦痛など耐えられる筈だ。まぁ、私のようにはじめからこの音が好きな人間もいるわけだが…。
こういったストーナー系のロックを聴くならまずここから入るといい。わりと聴きやすい部分もあるし、メルヴィンズの色もよく分かるので、かなりオススメである。
息苦しい解放を求めるなら、このジャケを持ってレジへ。
トレント・レズナーはどこに行こうとしているのか?
冷たい感触、痛々しいまでのボーカル。そしてあの衝撃音。
かつて「フラジャイル」を出した頃に「ギターは弦が六本もあるからおもしろい」というようなことを語っていた。同時に発せられる音数が多いという利点を、果たして彼はどのように活用したのか?
すべての答えはここにある。一曲目、いきなりボーカルが裏返りそうになるところがあるが、その不安定さもナインインチネイルズを構成している重要なファクターの一つなのである。
ナインインチネイルズのロックは、音響的な意味での重みではなく、かつてのシド・バレットにも通じる表現者の内面にある重みなのではないだろうか?
そう考えたとき、ここにある透明さと暗さ、そして重さの根源となる風景を垣間見ることができる。ナインインチネイルズとはトレント・レズナーの心の内部の情景を映し出す鏡なのであって、同時に外部へとそれを伝達する装置としても機能しているのだ。
恐るべきもののように思えるかもしれないが、そうではない。これは治療であり、癒しの音楽だ。トレントの内面が浄化されるために、彼はこうして作品を発表しているのであるし、我々はここにあるものを聴き、トレント・レズナーという闇を理解しなくてはならない。
ロックが受け手だけのエンターテイメントとして機能した時代は、既に終わっている。
美しさを重さ(音響的にも精神的にも)で表現することにおいて、ここに一つの理想形が見える。TOOLのメイナードらが開始したこのバンドは、エモーショナルなへヴィ・ロックを新しいステージに持ち上げたように思える。
TOOLが凄まじいへヴィネスを作り出していたため、A Perfect Circleも同じノリの音楽だと思われがちだが、こちらはTOOLのような絶望的へヴィネスでは無く、モダンな感覚をも備えたエモーショナルなロックである。ただ、どちらも圧倒的なまでの衝撃を兼ね備えているので、どちらが良いとか悪いとか言うのは好みの問題。
本作は前作に比べて緊張感が増している。それはあまりにも悪夢的な窒息感なので、金縛りに良く合うという体質の人は聴かない方がいい。寝る前に聴くのもヤバい。なるべく脳が覚醒しているときに触れるべきだ。A Perfect Circleはオシャレだが、常用すると危険であり、依存性も高い性質の音楽である。
メイナードという人の狂気は、ちょっとの接触ならこざっぱりとした印象を受けるが、そういうものほど強い毒を持っているということを決して忘れてはならない。
デカくて黒い! その名前だけで随分と凶悪な香りのするこの人達。リーダーはスティーヴ・アルビニで、ギターはやっぱりジャージャー鳴ってる。
リズムだけ何故かドラムマシンという変則ユニットの彼らは、後のバンドに与えた影響の大きさを考えたらやはり偉大。アルビニはこの後「レイプマン」というバンドを結成するも、女性団体からの抗議であっけなく解散。
レイプマン時代にアルビニは、名曲「Kim Gordon's Panties」を、こともあろうかソニック・ユースの対バンで演奏してしまい、サーストン・ムーアに半殺しにされたというほのぼのエピソードもあり。現在では他バンドのプロデュースとかミックスとかやってるみたいだけど、レコーディングに立ち会って勝手にミキサーいじったりして周囲を困らせているという。変人は迷惑ですね。
いやぁ、ダイムバック・ダレル死んじゃったね! ステージで射殺されるなんて、パンテラらしいと思った人はあと百回ぐらい本盤を聴いて「悩殺」されてください。ダイムバックは心優しい男で、俺はスライドなんてケチな技は使わねぇ、とか言っておきながらちょこちょこスライドさせたりして、結構適当で大らかな奴だったと思う(会ったことないけど)。そんなダイムバックを死んでカリスマみたいに言う奴はすぐに電機ドリルで頭ぶち抜いて死ね。なんだかんだ言って、パンテラってダサかっこよかったじゃん。
ちなみにダイムバックを撃った男は駆けつけた警官によってすぐさま射殺されてしまった。犯行の動機なんてどうだっていいけど、ダイムバックの新作が聴けないのは少し寂しいですね。ダメージ・プランも意外に好きだったりして。若いやつらはみんなパンテラ聴いて暴れればいいのです。そうすればこんな悲惨な事件は起こらないはず。
本日のストーナー。カイアスはかなりカッコイイんで、この手の遅くて重い音楽の初心者でもけっこう楽しめる作りになってると思う。やる気なくごろごろ寝て過ごす日には最高のBGMですね。
若人あきらと郷ひろみが交互に出てきてストリップしてるような狂った世界が延々と続き、間違ってリピート設定にしていた日には間違いなく墜落。そして涅槃。そんなカイアスはこのアルバムがやっぱり一番イイですね。 それと、別にこういう音楽ばっかり聴いているわけじゃないんで、誤解しないでください。最近ドゥームメタルとか好きなんですか? という質問が多く辟易したりしなかったり。マスト。
ドゥームロックとかストーナーズ・ロックって流行ったよね。やたら重くて遅くて暗いやつ。こういうの聴いて何が楽しいんだろう。どういうやつが聴くんだろうね、こういうの。ちなみに僕は聴きましたけど。しかも結構好きです。
誰もいない沼でゆっくり沈んでいく感覚プラス、競馬で全財産スッた後のような喪失感がどろどろと押し寄せてくる奇怪なロック。ブラックサバス辺りのバンドがルーツなんだろうけど、最近の若いバンド連中は節度を知らないのでこういうドロドロの遅くて重い極地まで行ってしまったのです。
嫌なことがあったときとかは逆にこういうの聴くといいかも知れない、そんな名盤。
ゲゲゲの鬼太郎に出てくる目玉の親父の存在と、バタイユが醜悪な父親について書いた「眼球譚」の関係について考えてしまうのは、ひとえにこのジャケットのせいであって、決して中身はそこへ接続されていない。
このバンドが凄かったのは、近年大流行したラウド・ロックのプロトタイプとでも言うべきサウンドをいち早く提示していたからであって、そこに秘められた思想性ではまったくない。しかしながら、ここまで簡潔にハードコアともメタルとも違った切り口で、「重さ」を表現する方法を編み出したという点ではかなり評価されるべきバンドだと思う。
で、たまに聴くと意外とまだカッコよく、何回か売り飛ばそうとしたができなかったアルバムが本盤である。へヴィ・ロックが好きだと言うなら一応押さえておいても損は無い一枚。