NINE INCH NAILS 『WITH TEETH』

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 トレント・レズナーはどこに行こうとしているのか?
 冷たい感触、痛々しいまでのボーカル。そしてあの衝撃音。
 かつて「フラジャイル」を出した頃に「ギターは弦が六本もあるからおもしろい」というようなことを語っていた。同時に発せられる音数が多いという利点を、果たして彼はどのように活用したのか?
 すべての答えはここにある。一曲目、いきなりボーカルが裏返りそうになるところがあるが、その不安定さもナインインチネイルズを構成している重要なファクターの一つなのである。
 ナインインチネイルズのロックは、音響的な意味での重みではなく、かつてのシド・バレットにも通じる表現者の内面にある重みなのではないだろうか?
 そう考えたとき、ここにある透明さと暗さ、そして重さの根源となる風景を垣間見ることができる。ナインインチネイルズとはトレント・レズナーの心の内部の情景を映し出す鏡なのであって、同時に外部へとそれを伝達する装置としても機能しているのだ。
 恐るべきもののように思えるかもしれないが、そうではない。これは治療であり、癒しの音楽だ。トレントの内面が浄化されるために、彼はこうして作品を発表しているのであるし、我々はここにあるものを聴き、トレント・レズナーという闇を理解しなくてはならない。
 ロックが受け手だけのエンターテイメントとして機能した時代は、既に終わっている。

投稿者:asidru 2005年08月23日 21:33

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コメント: NINE INCH NAILS 『WITH TEETH』

NINのこの新作は実は、まだ聴いていないのですよー。でも、過去のは聴いた事あります。
確かに音響というよりは、内面にすごく重みを感じさせるヒトですよね。
こういうヒトがUSで大きく人気が出たというのは、なにかスゴク考えさせられます。やはり癒しの一種としてなくてはならない音になっているのかなって、私も思います。いろいろ難しい世の中になってきたという事なんでしょうか。

投稿者 zuma : 2005年08月23日 23:22

複雑な世の中になってきてますよね。
こういった作品が登場してきたという背景には現代における何かしらの歪みのようなモノがあると思うのですが、純粋に音楽として楽しめれば個人的には問題ないのです。
良いアルバムなので機会があればぜひ聴いてみて下さい。前作よりも洗練された深みがあります。

投稿者 森本 : 2005年08月24日 01:29

こんちは、お久です。
ナインインチは今年の某フェスで観てきました。
トレントレズナーがまっちょになってて
スポーツ選手か俳優か、って感じの外見でした。
演奏は力強く突き抜けてるという雰囲気を
感じました。が、
なんかでも沈殿してたものがほとんど筋肉に
かわっちまったんじゃねーの、
とややせせら笑い気味でアメリカから帰ってきて
はや一月も経っているあべです。
どうっすか調子の方は。
僕のサラリー生活は今月忙しいらしいです。

投稿者 あべ : 2005年08月24日 01:38

お久しぶり!
もう帰国してたんですね。
トレントレズナーも筋トレしたんでしょう。このアルバムでのある種ふっ切れたような感じは、頑張って筋トレしているいじめられっ子のチャレンジ精神に似ています。
いわばリハビリテーション。トレントがロリンズみたいになる日を夢見ています。
ロックミュージシャンが出るK-1みたいなのがあったら観たいです。もちろんトレントレズナー対ヘンリーロリンズのカードで。

投稿者 森本 : 2005年08月24日 01:50

あ、観たいですね。
あったらロリンズ圧勝っぽいんですけど、
トレントに勝って欲しいっすね。
いや、でも実際に舞台の前にいったら
なんだか少し距離感を感じましたよ。
、俺はもう音楽なんだよロックエンロールなんだよ、
みたいな。

投稿者 あべ : 2005年08月25日 00:08

トレントレズナー、もともと玄人っぽいの好きそうですよね。
本来あるべく姿にやっと戻ったって感じなんでしょうかね。やる気満々というか…。
まぁ今後トレントがどうなっていくのかというのが一番興味あります。
ロリンズに負けた後リベンジするトレントレズナー、そして田舎のハードコアバンドのドラムとかが突然ロリンズを倒して、トレントも更に修行を積んだり、なんていう格闘技が早く設置されることを望みたいです。ブラジルのハードコアの奴とか強そうですよね。

投稿者 森本 : 2005年08月25日 00:39

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