PINK FAIRIES 「KINGS OF OBLIVION」

KINGS OF OBLIVION.jpg

 「ピンクのブタが飛んでてさぁ…」
 中学のとき、ヒッピー風の男がそんなことを電車内でしゃべっているのを耳にした。そのとき、こいつは頭がおかしいのか? と思った。私は素直な少年だった。
 しかしながら、ピンクのブタが飛んでいる、という言葉がその日以来頭から離れなくなってしまった。
 毎日毎日「ピンクのブタが飛んでいる」ことばかりを考え続けた。時期的には周りが高校受験という単語を口にし始めた頃だった。
 ある日、何も知らなさそうなクラスの女の子に「ピンクのブタが飛んでいるのって見たことある?」と聞いてみた。ところが、その子は顔を赤くして「何言ってんの?」と切り捨てたのである。まるで私が卑猥なことでも言ったようだった。
 もうピンクのブタ幻想が私の頭の中で破裂しかけた頃、その謎は氷解した。
 レコード店でこのジャケを見つけたのである。
 私はすぐさまありったけの小遣いを使用して本作を購入。そしてしばらくは音を聴かないままジャケットだけを眺め続けたのだった。
 しかし、あまりにも刺激が強すぎたため、私はしばらくこのレコードのことを忘れてしまう。
 その後、なんとなく高校に入って、特に何もすることがなかったので古い音楽をいろいろと聴くようになった。特にサイケデリックのもやもやした感じが当時は妙に耳に馴染む気がして、聴き続けているうちにそういったレコードの知識が自然と身についていった。
 トゥインクというのを知ったのはそんなときで、当然トゥインクからピンクフェアリーズのことを思い出し、本作は再びターンテーブルへ乗ることとなったのである。
 そのとき聴きなおしたこのアルバムの破壊力は、いまでも鮮明に覚えている。とにかくハードでストレートな楽曲が、ジャケのイメージとは無関係に炸裂する。トゥインク在籍時の一枚目にあったようなどろっとした感じは無く、どちらかというとソリッドな質感であった。
 ピンクフェアリーズに対する私のエピソードはそんなところだ。
 それ以外、特にこのバンドと密接な関係を持っていたことは無い。しかしながらジャケットのイメージだけは妙に強く残っているのが不思議である。
 

投稿者:asidru 2005年11月03日 07:18

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コメント: PINK FAIRIES 「KINGS OF OBLIVION」

全3作が輸入盤で充実の装丁・内容でCD化されてますよね。ヘヴィ・メタル、パンク勃興期、サイケ・ブームなど常に再評価が繰り返されていますが、ジャンル分けしにくいブッコワレ具合が日本ではアダになってるのかも。ちなみにユニオンではプログレ館、ジャニスではレトロ・メタルのコーナーに鎮座されております。私は「nevermind」がマストですが、本作も大好きです。

関係ない話ですが、私は半年前、傍無名バンドを検索してここへ来ました。森本さん自身も「このバンドに関する情報はネット上でもほとんど入手できない」と述べられており、一気に親近感が湧きました。やはり開かれた誰でも入れるサイトは思わぬ出会いがあっていいな、と思いました。私信があればメールで連絡することもできます。

今トレンド化しているmixiに私は批判的です。2ちゃんは匿名性やアングラ性から見もしない奴が否定したりしますが、誰でも見ることができるから反論を起こすこともできます。ヤフグルなどログインが必要な会員制サイトも一定の個人情報や会費と引換えに誰でもほしい情報を得られます。

mixiの招待制は自分の意志と関係なく、招待するかしないかその人の人柄や気分次第になっています。そしてそこで語られている話題の中心人物が情報を知ることができず、関係ない他の人間が知ることができ、更にまったく関係ない人間が覗き見るということもできます。場合によっては、書き込んだ人間の悪意・善意に関わらずアリバイ崩しみたいなことが、本人の努力では知ったり防いだりできないところで発生してきます。

ここで語っても無意味ですが、mixiで話題にする場合、自分個人のこと、一般的なこと、特定の個人にしか分からないメッセージなどにするべきだと思います。さもなければ、非公開コミュニティにするべきです。ましてや、話題にした人物が、本人の意志やmixiに対する考え方と関係なくmixiに入っているかいないか不明なら、少なくとも、手の届く範囲の人間なら一言告げるべきだと思います。「見る人が見ればわかる」ような話題・人物でしたら、たとえ、匿名で取り上げても全く責任を果たしたことにはなりません。

マイミクシに自然登録され閲覧足跡が残ろうと、フリーメールを駆使すればいくらでも逃げ道があるのは、何か責任回避の最終手段みたいで、すごく陰湿な感じがします。大半の人はそこまで考えず気軽に日常を語っているのでしょうが、そこで取り上げている気軽な話題が他人にとっては重要なことである場合もあります。

mixiを利用している人は「なぜ自分は通常公開ではなくmixiを使っているのか」を今一度肝に銘じて、更に取り上げた話題によっては、話題の中心人物がmixiに参加しているか不明なら、事前もしくは事後の告知や招待など、丁寧なアフターフォローをするべきだと思います。

森本さん、大事なブログを借りて長々とスミマセン。考えようによってはmixiよりはるかに悪質ですね。ただ、久々に覗いたら、大好きなピンクスが取り上げられており、つい嬉しくなって、最近不愉快な思いをしたことを書いてしまいました。

ま、悪意はない(むしろ善意ということは百も承知ですが)けど、ネット社会になってから、自分の発信した情報が想像もつかない程遠く広く届いているということに無神経な奴もいて、嫌な思いをすることもあるもんだと最近思った次第です。ここにそぐわない話というのは百も承知ですので、不愉快でしたら削除して下さい。そして森本さんをはじめ、mixiを健全利用されておられる方がいらっしゃいましたら、暴言の数々お許し下さい。

これからもよろしくお願いします。 吉澤

投稿者 吉澤 : 2005年11月04日 18:24

吉澤さんこんばんは。
ピンクスも再発とは…。全部買いなおしてみたいです。
ジャンル分けしにくい音楽の再発は「いったいどのコーナーにおかれるのか」という点からも楽しめるので、このままどんどん活性化してほしいと思います。

mixiの犯罪性というか、マイナス面での効果というのは物凄いですね。私はmixiをよく理解していませんが、使い方によっては一人の個人を社会的に抹殺することも可能ですからね。しかも閉ざされた空間である、という認識をもってmixiに参加している人間が少ない気もします。
私は絶対にコミュニティに入らない、なるべく他人に足跡をつけない、なるべく自分の足跡も見ない、マイミクは依頼があった場合のみ、偽名にて架空の人物を演じる、日記はあからさまな真実を書き込まない、周囲や特定の個人といった実在する人物についての言及はしない。などのルールを勝手に決めていますが、ものすごく軽い気持ちでmixiを始め、他人を不愉快にさせている人間もいるようです。
mixi上での批判、というより嫌がらせですね、そういったものに対しては私も反対派です。特定の団体や個人が本人の知らないうちに、間違った情報で否定されている、といった状況は、海の向こうには鬼が住んでいると考えていた鎖国時代の日本人のようなもので、文化的とは言いづらい状況です。

どうせやるならば本名で住所も公開、逃げも隠れもできない条件での発言というのが最も良いですね。責任無き批判は批判に値しません。

ところで私は吉澤さんのレビューを某雑誌で読ませていただき、その丁寧でしっかりした文章に好感を持たせていただきました。音楽作品を文章で解説・紹介するという作業はなかなか困難なもので、私などはつい逃げ道に入ってしまうのですが、吉澤さんはいつも背筋を正した真っ直ぐな視点で作品を評価されており、見習わなければ、と思う点も多かったです。

今後ともぜひよろしくお願い致します。最近では本業が忙しくこのブログも更新が遅れていますが、そろそろもとのペースに戻れますので、たまに覗いてやってください。
それでは。

投稿者 森本 : 2005年11月04日 20:19

森本さん、暖かいお言葉ありがとうございます。お陰で励まされました。

ところで、先の書き込みで5段目に「非公開コミュニティ」と書いたのは「プライベート・モード」の間違い、またピンクスは「nevermind」ではなく「neverneverland」でした。よく確認せず、半知識やペーストばかりで書き込むと思わぬ恥をネット上で曝すという見本ですね(笑)。

傍誌では現在製作中の次号でも、少しレビューを書きました。評判の悪い再発レーベルの作品です。私自身は、作品を非難できるのは自分でお金を出して手に入れた人だけだ、と思っています。たとえ手に入れなくとも、再発前のオリジナルを聞き込んでオリジナルとの違いを指摘できる人、だと思っています。何か、このレーベルを非難するのをみんなやってるから自分も乗ってみた、とか、「○○は●●に恩があるんだろうから断れなかったんだろうよ」などと、したり顔で語るのが多すぎる気がします。まあ、非公開でない限り、責任は全部本人に返ってくるのですから、何を言おうと勝手ですが。

取り上げた作品については、ありがちなレーベル批判におちいらないよう、大先生によるライナーやメーカーからの資料には載っていない私の持つ情報をフル動員し、淡々と紹介したつもりです。見かけることがありましたらぜひご覧下さい。

投稿者 吉澤 : 2005年11月04日 22:46

レーベル批判、たまに見かけます。
自分の知っているレーベルで、それなりに楽しめる作品をリリースしていた場合、私はそんな批判は無視してしまいますが、世の中にはひどく周りの情報を鵜呑みにしたり曲解したまま意見を言ったりする人が多いですね。
音楽に対する礼儀として、批判を行うならばそれなりの責任を負う覚悟は必要だと思いますが、それが無い人が多いのがネットというものですね。
その礼儀をわきまえている音楽ライターの方々を私は尊敬しています。たとえどんな批判をされていようと、プロとしての礼儀を持ち合わせている批評家というのは素晴らしいですね。
よく駆け出しのライターさんのための講座みたいなものが開かれていますが、ああいう場でもっとも教えなくてはいけないのがそういった礼儀と自覚だと思います。
私は音楽ライターでも批評家でもありませんが、ネット上で音楽作品を紹介している者としての責任は持つようにしています。誰かの尻馬に乗ったり、責任の無い批判はしないというのは、道徳的に考えても正しいと思うのですが…そうでない人もたくさんいるんですよね…。
まぁ、そういう人というのは実生活においてもただの嫌われ者に過ぎないと思いますので、相手をしないという方法しか思いつきません。何かいい対処方法がありましたらご一報ください(笑)。

某誌の次号、楽しみにさせていただきます。あの雑誌を読むと批評することに対して少し考えさせてもらえるので、貴重な媒体だと思います。いわゆる一般の音楽誌と感触が違うので、このままの形で進んでいってほしいと思います。
今後ともよろしくお願いします!

投稿者 森本 : 2005年11月04日 23:36

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