世の中の右と左そしてうしろ 暗がりで笑う人をみたときや 銀行のATMで現金を取り忘れたときに なんとなく読むブログ
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「下水の臭いを嗅ぐと、宇宙から物凄いスピードで言葉が落ちてくるんです」
田中さんは真剣な顔で語り始めた。
「うーん、なんていうか、啓示みたいなものなんでしょうかね。最近そればっかなんですよ。で、公園の砂場に埋まってるプラスチック製の小さなブルドーザーのおもちゃから「助けてくれ、助けてくれ」ってずーーーーーっと訴えられ続けるんです。だからもう夜中の三時だっていうのに砂場を掘り返して(笑)。で、ついに助け出したんですよ。
えっ? 助けたブルドーザーですか? ここにいますよ」
何も無いテーブルの上に、彼は薄汚いおもちゃをポン、と置いた。
「これが煩くてねぇー、助けた後はおとなしくなったんですが」
ブルドーザーは沈黙していた。しかし、よく見てみると、運転席にGIジョーのような無表情な人形(作業服を着ている)が乗っていて、その人形からは特に魅力みたいなものは一切感じられなかったのであるが、胸の奥につっかかるような妙な感覚がして、しばし見入ってしまった。
と、そのとき、かすかに人の声のようなものが聞こえた。
「タス、、、ケ、テ」
私は驚いてブルドーザーを、そして運転席を更に見つめた。すると、どんどんその声が大きくなっていく。
「助けて。助けて。助けて。助けて。助けて。助けて。助けて。助けて。助けて。助けて。助けて。助けて。助けて。助けて。助けて。助けて。助けて。助けて。助けて。助けて。助けて。助けて。」
だんだんと力強くなっていく声に得体の知れない恐怖を感じ、私は後ろへ飛ぶようにして下がった。理解できない状況に混乱しながら、ふと田中さんの方を見ると、
「助けて。助けて。助けて。助けて。助けて。助けて。助けて。助けて。助けて。助けて。助けて。助けて。助けて。助けて。助けて。助けて。助けて。助けて。助けて。助けて。助けて。助けて。」
声を出していたのはブルドーザーでも人形でもなく、田中さんだった。
現在、田中宗一郎さんは宇宙で賭け麻雀をやったりして適当に暮らしている。
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