PRENTICE & TUTTLE  「EVERY LOVING DAY 」

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 シンプルに作るということは、無駄なものを削除していくというだけではない。
 最初から限られたパーツのみで構築し、贅肉を生成させないことによって完成するものもある。
 この72年のボストン宅録風フォークミュージックは、そのあまりのナチュラルな完成度に驚きを隠せないぐらいシンプルだ。
 うたとアコースティックギター。それだけで世界が作られている。
 たとえば、毎日通勤途中に見かけていた老人がある日を境に姿を見せなくなるとする。その場合、まず脳裏に浮かぶのは老人にのっぴきならぬ事態が訪れたのだろうか、ということである。ひょっして亡くなったのか、それとも体調を崩しているのだろうか? そんなことを想ってみても、すぐに老人と毎朝出会っていたという記憶は風化していってしまう。なぜなら、日常のリズムが浸透し、老人のいた風景がその規則性の層に埋没してしまうからだ。
 PRENTICE & TUTTLEは、その埋没した日常を掘り起こすような作業を淡々と行う。それは、ときに残酷なことのようにも思える。

投稿者:asidru 2006年07月21日 22:32

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