世の中の右と左そしてうしろ 暗がりで笑う人をみたときや 銀行のATMで現金を取り忘れたときに なんとなく読むブログ
2007年12月のアーカイブ
誰にでも触れられたくない過去というものはあるだろうが、そんな意に反して周囲はその過去を褒め称え、絶賛する。そうなってくると、過去を背負った当人はどんどんその過去が疎ましくなり、ろくでもないものとして封印したくなってきてしまう。
Organisationのこのアルバムは、まさにそんな過去の一つ。これがクラフトワークの前身だと知っている人がはたして何人いるのだろうか?
しかし、埋もれていた筈のこのアルバムを引っ張り出したのはクラフトワークファンであり、メンバー当人らは失敗作とみなしているにも関わらず、オリジナル盤が高額な値で出回ったり、いまだにブートが出たりしているのである。
このような現象を逆手にとって、まったくの失敗作を伝説的な作品にまで押し上げる方法というのをいろいろ考えてみたのであるが、結局はクラフトワーク並みの知名度が無ければそれは不可能なんだなぁと思い至り、馬鹿なことを考えていた数分の過去を僕は封印したくなったのであった。
SACDというものがある。これは、スーパーオーディオコンパクトディスクの略なのだが、従来のCDとはまったく別物と考えてもよいメディアだ。
このSACDはアナログレコードが40kHzであるのに対して、100kHzをカバーする再生周波数範囲と可聴帯域内120dB以上のダイナミックレンジを実現しているとのことで、確かに抜群の高音質を誇っている。
しかし、これとアナログレコードを聴き比べたとき、どちらの音が「良いか」というのは単純に好みの問題になってくる。おそらく、ずば抜けて音質のいいSACDと、従来ののアナログレコードを並べ、同じ音源をかけ、10人の人に聞き比べてもらったら評価は真っ二つに分かれると思うのだ。
これは音を好きになる基準が「音質」であるならばSACDを選ぶが、それ以外の質感を求める者はアナログを選ぶということだと思う。
では、音質的には優れていないアナログレコードの方を選んだ人は、どんな理由でそうしたのかといえば、「ただ慣れ親しんだ音であるから」ということであろう。
アナログレコードやカセットテープに慣れ親しんでいた人々の前にCDが登場したときも、アナログ派は存在していた。「アナログの方が音がいい」と言う人もいた。
たしかに、PILの「メタルボックス」なんかはオリジナル12インチ盤の凄まじい音圧を体験してしまったらCD盤なんて買えないだろうし、聞き比べても「アナログ盤の方がかっこいい」という意見が多いことと思われる。
アナログの性質とCDの性質は別物であるし、出る音そのものがやはり違うのだ。
だからアナログ盤の音に慣れ親しんでいた者にとって、SACDの音はまったく違ったものに聞こえると思う。逆に、今のCDしか知らない世代がアナログ盤を聴いて感動する、ということもあり得る。そんなとき、彼らの耳に聞こえているものというのは、自分の意識の中で理想としている音なのだろう。
高音質という概念が人によって違うんじゃないかと気づいたのは、かつてMDが発売されたときだった。
カセットテープを越えるかなりの高音質として売り出されたMDであったが、僕はカセットテープを愛用し続けた。いまだにハイポジションのカセットテープを使ったりしている。
なので、どちらが優れているかという話しになると、僕は答えかねるのだ。
音質がいいのはSACD、たしかに聴いても良い音質だと思う。だが、どちらが好きか? と聞かれたらやはりアナログレコードと答えてしまうわけだ。
僕は別にアナログマニアなわけじゃないし、細かい音響のことは分からないが、SACDの音よりもアナログ盤の音の方がしっくりくる。
案外、僕のような人間が多いせいで新しいオーディオメディアが受け入れられにくくなっているのかもしれないなと思うと、すこしだけ申し訳ない気分になったりもして…。